* 川合のプログラミング言語自作のためのテキスト第三版#3 -(by [[K]], 2021.03.01) ** (1) HL-3 -HL-2に条件分岐や無条件分岐を付けてみようと思います。それでラベル定義、goto命令、if~goto命令の3つを追加してみました。 -gotoは嫌だと思う人もたくさんいそうですが、やはりどう考えてもgotoは説明が簡単で分かりやすいので、ここで扱うことにします。 -goto以外の制御構文はHL-8で導入予定です。 -条件分岐ができるようになるとループを使った簡単な性能試験ができるので、実行時間を表示させるためのtime命令も追加してあります。 #include <stdio.h> #include <stdlib.h> #include <string.h> #include <time.h> ← この行を追加 typedef unsigned char *String; // こう書くと String は unsigned char * の代用になる. void loadText(int argc, const char **argv, unsigned char *t, int siz) → HL-1と同じなので省略 (以下ずっとHL-2と同じなので省略) int main(int argc, const char **argv) { int pc, pc1; unsigned char txt[10000]; // ソースコード用のバッファ. loadText(argc, argv, txt, 10000); pc1 = lexer(txt, tc); tc[pc1] = tc[pc1 + 1] = tc[pc1 + 2] = tc[pc1 + 3] = getTc(".", 1); // エラー表示用のために末尾にピリオドを登録しておく. int semi = getTc(";", 1); + for (pc = 0; pc < pc1; pc++) { // ラベル定義命令を探して位置を登録. + if (tc[pc + 1] == getTc(":", 1)) { + var[tc[pc]] = pc + 2; // ラベル定義命令の次のpc値を変数に記憶させておく. + } + } ! for (pc = 0; pc < pc1;) { // プログラム実行開始. if (tc[pc + 1] == getTc("=", 1) && tc[pc + 3] == semi) { // 単純代入. var[tc[pc]] = var[tc[pc + 2]]; } else if (tc[pc + 1] == getTc("=", 1) && tc[pc + 3] == getTc("+", 1) && tc[pc + 5] == semi) { // 加算. var[tc[pc]] = var[tc[pc + 2]] + var[tc[pc + 4]]; } else if (tc[pc + 1] == getTc("=", 1) && tc[pc + 3] == getTc("-", 1) && tc[pc + 5] == semi) { // 減算. var[tc[pc]] = var[tc[pc + 2]] - var[tc[pc + 4]]; } else if (tc[pc] == getTc("print", 5) && tc[pc + 2] == semi) { // print. printf("%d\n", var[tc[pc + 1]]); + } else if (tc[pc + 1] == getTc(":", 1)) { // ラベル定義命令. + pc += 2; // 何もしないで読み飛ばす. + continue; + } else if (tc[pc] == getTc("goto", 4) && tc[pc + 2] == semi) { // goto. + pc = var[tc[pc + 1]]; + continue; + } else if (tc[pc] == getTc("if", 2) && tc[pc + 1] == getTc("(", 1) && tc[pc + 5] == getTc(")", 1) && tc[pc + 6] == getTc("goto", 4) && tc[pc + 8] == semi) { // if (...) goto. + int gpc = var[tc[pc + 7]], v0 = var[tc[pc + 2]], v1 = var[tc[pc + 4]]; + if (tc[pc + 3] == getTc("!=", 2) && v0 != v1) { pc = gpc; continue; } // 条件が成立したらgoto処理. + if (tc[pc + 3] == getTc("==", 2) && v0 == v1) { pc = gpc; continue; } // 条件が成立したらgoto処理. + if (tc[pc + 3] == getTc("<", 1) && v0 < v1) { pc = gpc; continue; } // 条件が成立したらgoto処理. + } else if (tc[pc] == getTc("time", 4) && tc[pc + 1] == semi) { + printf("time: %.3f[sec]\n", clock() / (double) CLOCKS_PER_SEC); } else goto err; while (tc[pc] != semi) pc++; + pc++; // セミコロンを読み飛ばす. } exit(0); err: printf("syntax error : %s %s %s %s\n", ts[tc[pc]], ts[tc[pc + 1]], ts[tc[pc + 2]], ts[tc[pc + 3]]); exit(1); } -HL-2と比較すると、#includeが1行増えて、main関数を1行改変してさらに19行を書き足しただけです。だから合計で148行です。 -main関数内で追加した行の先頭には、わかりやすいように「+」でマークをつけておきました。改変のあった行には「!」を付けておきました。実際に入力する際には、これらをスペースにして入力してください。 -このHL-3は以下のようなプログラムを実行可能です。 i = 0; label: i = i + 1; if (i < 100000000) goto label; time; ** (2) HL-3の簡単な説明 -関数:(註:HL-2と全く同じです) --void loadText(int argc, const char **argv, String t, int siz) ---コマンドライン引数で指定されたソースファイルをtに読み込む。sizはtの最大サイズを表す(これを超える長さのファイルは途中で打ち切られる)。 --int getTc(String s, int len) ---トークン(単語)をsに渡すと、それに対応するトークンコード(整数)を返す。 --int isAlphabetOrNumber(unsigned char c) ---引数で渡された文字コードが、英数字であれば1を返す。それ以外なら0を返す。 ---アンダースコアもHL-3の中ではアルファベットということにしておく。そうすることで、変数の一文字目に使えるようになる。 ---この関数は以下のlexer()の下請け。 --int lexer(String s, int tc[]) ---sにプログラムのソースコードを渡す。すると、tc[]にトークンコード(単語番号)に変換させられた数列が入って返される。 ---より詳しい動作は、[[a21_txt01_2a]]を参照のこと。 --int main(int argc, const char **argv) ---言語処理の本体。 -変数: --String ts[] ---getTc()が管理している配列変数で、トークンコードからトークン文字列を得るために使う。 --int tl[] ---getTc()が管理している配列変数で、トークンコードからトークン文字列の長さを得るために使う。 --unsigned char tcBuf[] ---getTc()が管理している変数で、トークン文字列の実体を保存しておくための場所。 --int tcs, tcb ---どちらもgetTc()が管理している変数で、tcsは今までに発行したトークンコードの個数(0~tcs-1が発行済み)。 ---tcbはtcBuf[]の未使用領域を指している。 ---もしtcBuf[]やtcbの役割がピンとこない場合は、[[a21_txt01_2b]]を参照。 --int var[] ---変数の値を記憶しておくための変数。トークンコードをそのまま変数番号に転用している。 --int tc[] ---プログラムをトークンコード列に変換したものがここに入る。 ---- -ラベル定義命令では「abc:」という命令があった場合、「abc」という変数にpc値を記憶させておきます。つまりHL-3では、ラベル名と同じ変数名は同時には使えません。 -goto命令は、その値を利用してpc値を更新して、分岐を実現しています。 -if~goto命令では、ifの中の条件が成立しているかどうかを調べて、もし成立していたらgoto部分を実行しているだけです。 -time命令についても、特に難しいことはないと思います。標準関数clock()を使って、TL-3が起動してからの起動時間を表示します。この関数を使うために<time.h>をincludeしています。 -time命令についても、特に難しいことはないと思います。標準関数clock()を使って、HL-3が起動してからの起動時間を表示します。この関数を使うために<time.h>をincludeしています。 ** 次回に続く -次回: [[a21_txt01_4]] *こめんと欄 #comment